誤解を恐れずに端的に言えば、コンピュータをインターネット越しに使う、それだけです。でもたったそれだけの仕組みが当たり前になったことで、世の中は大きく変化しました。
今日、私たちはコンピュータを使ったゲームで遊んだり、写真や動画を楽しんだり、何かを買ったりしています。お金も動画も文字もゲームもあらゆるモノがコンピュータ上ではデータとして存在し、このようなデータを計算することで私たち人間にとって意味のある結果を生み出しています。そしてほとんどの場合、相手との通信が発生します。買い手は売り手に通信を通してお金を払いますし、写真をアップロードするのもストリーミングで動画を見るのも通信を伴います。
20世紀までは、このようなコンピューティングをするために各々の企業や個人がコンピュータを持ち通信回線を契約するのが当たり前で、計算のためのデータも手元に蓄える必要がありました。
しかし21世紀に入り2010年頃から、インターネットやWeb技術、その他いくつかの重要なコンピュータ関連技術の発展と普及に伴い、クラウドコンピューティングが広く使われるようになっていきました。
クラウドコンピューティングでは、利用者から見れば、Webで電子書籍を買う感覚で仮想的なコンピュータをほんの数分で購入できます。その実体は、世界のどこかのサーバーコンピュータ上に作られており、たしかにそこで計算とデータの読み出しや書き込みを行っていますが、利用者はあたかも雲の向こうにコンピュータがあるかのように、それが物理的にどこで行われているかを気にする必要がありません。
クラウドコンピューティングはなぜほんの数年で爆発的な人気を得たのでしょうか?
クラウドコンピューティング以前、企業は高価なサーバーコンピュータが何台必要か予測し、発注し、納品を何ヶ月も待つ必要がありました。そして予測が外れればそれらのサーバーコンピュータは追加発注が必要になったり、あるいは無駄になりました。さらにコンピュータの進歩は目覚ましいため、高価なサーバーコンピュータでも数年で時代遅れになってしまいます。
しかしクラウドコンピューティングによって、企業は不確かな予測に基づいて高価なサーバーコンピュータを何ヶ月もかけてあらかじめ調達する代わりに、計算やデータの蓄積量に合わせて数分でサーバーコンピュータを何十台でも増やしたり減らしたりできるようになりました。
クラウドコンピューティングの費用は、仮想的なコンピュータが存在している期間だけ発生する時間課金なので、大企業に限らず、大きな資金を持たない個人や小規模な組織であってもクレジットカード一枚でコンピュータを調達できるようになりました。例えば10万円でサーバーコンピュータは1台も買えませんが、クラウドコンピューティングであれば最新性能のコンピュータを1ヶ月使うことができるでしょう。クラウドコンピューティングのこのような特長によって、市場はより活性化し多くの新しいインターネットサービスと事業が生まれました。これが今日クラウドコンピューティングが人気を博している理由です。
真新しい言葉は難しく感じられ、たしかにその内部の仕組みは極めて高度で複雑ですが、しかしその本質は、コンピュータをインターネット越しに使う、それだけです。